トリチウム放出問題を根源から考察するー①被ばく影響について
- 2013/12/30
- 23:59
原発事故に伴い発生したトリチウムの処理について、通常の除去処理法が使えないので、海に流す論調がメディアの主流になってきたようだ。メディアの発信はほとんどの場合、脊髄反射なので、原子力関係者の考えが其の方向にあると見るべきと思う。
しかし、本当にこの方向が正しい道なのだろうか、基本にもどり深く考察し、検証したいと思う。
上記の考えに至った本音は恐らく次の二つによるものと考える。
① 自然界にもごく微量でも存在するのだから被ばく影響はそんなに心配しなくても、薄めれば良いという考え
② しかも処理が難しく、その費用が莫大で実用的でないという考え
なお、分量の関係で、今回は前半の①について書き、続きは明日か明後日に書きます
説明上、誰にも理解し易いように初歩的な原子核の構成から書きます。
水素は最も単純な元素で原子核に陽子が1つしかなく、これに中性子が1個についたのが二重水素といい重さ(正確に質量)はほぼ倍になる。中性子2個付いたのが三重水素ともいわれるトリチウムです。このトリチウムは半減期12年の速度でβ線を放出して崩壊し、水素などから陽子を取り込むと不活性気体であるヘリウム(原子核は陽子と中性子各2個)に元素変換する。
次に基礎資料として、原子力資料情報室(参考資料1)によればトリチウムは地球上の天然でつくられる分の存在量は96京ベクレル (9.6×1017Bq) と推定されている。現在の降雨中の濃度は1~3ベクレル/リットルであるが、核兵器爆発の前は0.2~1ベクレル/リットルであった。
トリチウムの出すβ線は低エネルギーであり、水中での飛程距離は最大でも6μmしかなく、細胞の直径は20-30μmなので表皮の一層さへ通過できない。最外層皮膚は絶えず置き換わっているので外部被ばくという視点ではトリチウムは全く問題にならない。
従って、トリチウムによる内部被ばくだけが問題になる。 トリチウム水についてだけに注目してその体内にとどまる時間から毒性を論じる文を良く見かけるがそれは矮小化であり真の影響を過小評価することになる。
というのはトリチウムの半減期は長いので、自然界に放出された場合には細菌、カビのような微生物あるいは植物に取り込まれて有機化合物の水素結合構成成分として存在することになる。例えば立花章ら(参考文献1)によれば、トリチウム水の形の場合には細胞内入っている時でも、細胞内に均一に分布するため,細胞核内にβ線が届く場合が少なくDNAのが損傷を受ける確率も低くなる。一方、水素結合型トリチウムがDNAに取り込まれた場合にはβ線の届く範囲は細胞核内にほぼ限られるためDNA が損傷を受ける確率が上がるし、生体構成分子として体内に留まるため,長期にわたってベータ線被ばくを受けることである。
しかし、重要な働きをしているのはDNAだけではなく各種アミノ酸、酵素、ホルモンなど多数あり、水素結合した化合物も無数あるので、生物影響の影響を調べるには膨大の年月と経費がかかるだろう。
もう一つの心配は崩壊後のヘリウムへの原子転換である。DNAのケースで考えれば一個の細胞は壊滅的な影響を受けるが、組織1kgに1兆個の細胞があるので、1秒に1回壊れてもアポトーシス機構によってDNAのこわれた細胞は速やかに除去されるので、問題はないであろう。DNAの場合に一番問題になるのはほとんど壊れていないように見えて損傷がわずかなためにDNA修復検査にパスしてしまうことである。
従って、元素変換のようなドラスチックな変化ガ見逃されることはない筈であるので問題になる可能性は低い。
ただし、細胞内には無数の水素化合物が存在しており、これらの化合物が損傷した場合のアポトーシス機構は存在しないから、どのような影響があるか予測できない。
以上をまとめると
トリチウムは内部被ばくだけが問題になる。
水素結合部位からのトリチウムの影響は十分考えられるが詳細な実験報告はない。水素結合部のトリチウム崩壊からヘリウムへ元素への変換による影響はDNA損傷以外予測できない。
参考資料
1) http://www.cnic.jp/knowledge/2116
2)立花章ら:
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2012_04/jspf2012_04-228.pdf
しかし、本当にこの方向が正しい道なのだろうか、基本にもどり深く考察し、検証したいと思う。
上記の考えに至った本音は恐らく次の二つによるものと考える。
① 自然界にもごく微量でも存在するのだから被ばく影響はそんなに心配しなくても、薄めれば良いという考え
② しかも処理が難しく、その費用が莫大で実用的でないという考え
なお、分量の関係で、今回は前半の①について書き、続きは明日か明後日に書きます
説明上、誰にも理解し易いように初歩的な原子核の構成から書きます。
水素は最も単純な元素で原子核に陽子が1つしかなく、これに中性子が1個についたのが二重水素といい重さ(正確に質量)はほぼ倍になる。中性子2個付いたのが三重水素ともいわれるトリチウムです。このトリチウムは半減期12年の速度でβ線を放出して崩壊し、水素などから陽子を取り込むと不活性気体であるヘリウム(原子核は陽子と中性子各2個)に元素変換する。
次に基礎資料として、原子力資料情報室(参考資料1)によればトリチウムは地球上の天然でつくられる分の存在量は96京ベクレル (9.6×1017Bq) と推定されている。現在の降雨中の濃度は1~3ベクレル/リットルであるが、核兵器爆発の前は0.2~1ベクレル/リットルであった。
トリチウムの出すβ線は低エネルギーであり、水中での飛程距離は最大でも6μmしかなく、細胞の直径は20-30μmなので表皮の一層さへ通過できない。最外層皮膚は絶えず置き換わっているので外部被ばくという視点ではトリチウムは全く問題にならない。
従って、トリチウムによる内部被ばくだけが問題になる。 トリチウム水についてだけに注目してその体内にとどまる時間から毒性を論じる文を良く見かけるがそれは矮小化であり真の影響を過小評価することになる。
というのはトリチウムの半減期は長いので、自然界に放出された場合には細菌、カビのような微生物あるいは植物に取り込まれて有機化合物の水素結合構成成分として存在することになる。例えば立花章ら(参考文献1)によれば、トリチウム水の形の場合には細胞内入っている時でも、細胞内に均一に分布するため,細胞核内にβ線が届く場合が少なくDNAのが損傷を受ける確率も低くなる。一方、水素結合型トリチウムがDNAに取り込まれた場合にはβ線の届く範囲は細胞核内にほぼ限られるためDNA が損傷を受ける確率が上がるし、生体構成分子として体内に留まるため,長期にわたってベータ線被ばくを受けることである。
しかし、重要な働きをしているのはDNAだけではなく各種アミノ酸、酵素、ホルモンなど多数あり、水素結合した化合物も無数あるので、生物影響の影響を調べるには膨大の年月と経費がかかるだろう。
もう一つの心配は崩壊後のヘリウムへの原子転換である。DNAのケースで考えれば一個の細胞は壊滅的な影響を受けるが、組織1kgに1兆個の細胞があるので、1秒に1回壊れてもアポトーシス機構によってDNAのこわれた細胞は速やかに除去されるので、問題はないであろう。DNAの場合に一番問題になるのはほとんど壊れていないように見えて損傷がわずかなためにDNA修復検査にパスしてしまうことである。
従って、元素変換のようなドラスチックな変化ガ見逃されることはない筈であるので問題になる可能性は低い。
ただし、細胞内には無数の水素化合物が存在しており、これらの化合物が損傷した場合のアポトーシス機構は存在しないから、どのような影響があるか予測できない。
以上をまとめると
トリチウムは内部被ばくだけが問題になる。
水素結合部位からのトリチウムの影響は十分考えられるが詳細な実験報告はない。水素結合部のトリチウム崩壊からヘリウムへ元素への変換による影響はDNA損傷以外予測できない。
参考資料
1) http://www.cnic.jp/knowledge/2116
2)立花章ら:
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2012_04/jspf2012_04-228.pdf
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